2月8日(日)大雪で試合が延期となり「100人太鼓」は中止となりました。かわって3月22日(日)「リベンジ太鼓祭り」が開催されました。
柏の葉公園の桜は開花が始まっています。曇天・無風でラグビーにも和太鼓演奏にも最高のコンディションの中、NECグリーンロケッツ東葛は釜石シーウェイブスに54-14で快勝し、「リベンジ太鼓祭り」は大成功を収めました。スクラムZを演奏した試合は、これで5戦全勝となりました。
【リハーサル】
当日の参加者は47名。2月8日の参加者の半分です。それでも過去の演奏と比べると、最大人数だった2024年3月24日の演奏(37名)を10名上回っています。
今回、演奏場所を当初予定していたメインスタンド北寄り(陸上トラックの第3~第4コーナーの間)から、メインスタンド正面に変更しました(下図)。
このほうが、メインスタンドに集まるお客さんと対面で演奏ができるため、お客さんとコミュニケーションがとりやすくなります。

もうひとつ理由があります。メインスタンド正面は陸上トラックが直線なためコースラインに沿って太鼓配置がやりやすい、というメリットがあります。今回の太鼓配置は簡単に配置できるように、コースラインに沿った配置に変更しました。
9時30分に現地集合し、積み下ろした太鼓を直ちに陸上トラック上に配置。当初、横1列に合計18台の太鼓を置く予定でしたが、横幅が足りず最前列の太鼓をジグザグに置いて2列配置に変更し、3列目、4列目の太鼓はバランスと取りながら配置した結果、4列編成の分厚い太鼓配置が出来上がりました。
予定どおり10時からリハーサルを開始。今回パフォーマーは私達チームスクラムのみとなったことから、たっぷり1時間リハーサル時間を頂きました。殆どの方はスクラムZを叩くのは2月8日以来だったので、リハーサル中に演奏の勘を取り戻すことができました。MCの藤戸恭平さんと進行の連携を取り、春風、応援練習、選手花道入場を順調に合わせていきました。
【場外ステージ】
およそ30分の休憩をはさみ、11時30分から12時の間、場外ステージで太鼓演奏を行いました。11時から入場ゲートが開き、お客さんの入場が始まっています。そこで場外ステージのリハーサルを兼ねて、有志が集まって予定時間前から客寄せ太鼓を始めました。
ここは2月8日雪の中のゲリラ演奏会の経験が役に立ちました。今日の演目は、2月8日と同じ山呼、ヨーソロー、リアンなどです。雪の中の演奏は太鼓配置も、曲順も、演奏者も決めず自主的にその場で出来る演目をどんどん演奏しました。何も決めなくても経験を重ねたメンバーは、臨機応変に動くことができます。北本あずま太鼓による「花火」「セレブレーション」の後、最後に、菊池康平さん作曲の「リアン」を演奏しました。曲紹介を菊池さんにアポなしで振っても、さっと対応してくれました。
【スタジアム演奏(春風)】
場外ステージ終了後、私達はスタジアム内に戻り、12時20分頃春風を演奏しました。
手拍子を合わせ総勢47名での演奏。おそらく過去前例がない大編成での春風の演奏です。

春風や 闘志いだきて 丘に立つ 高浜虚子
この句をテーマに、太鼓芸能集団 鼓童の住吉祐太さんが春風を作曲しました。楽曲公開にあたって、鼓童のホームページに次のメッセージを寄せています。
みなぎる意志は勇ましく、清々しさすら感じさせられます。
力強くも爽やかに、そんな気持ちで演奏して頂けると幸いです。
私達が春風を演奏している間、選手たちはピッチ上でウォーミングアップを始めています。この場面で春風を演奏できる幸せを感じながらの、あっという間の3分50秒でした。
演奏終了後、このまま次の出番を演奏場所で待機し、選手花道入場、応援練習、キックオフカウントダウンと続きました。試合開始後、ただちに50台の太鼓を客席側に素早く退避させました。
【スタジアム演奏(スクラムZ)】
ハーフタイムが到来しました。私達はここで「スクラムZ」を演奏します。試合開始時に退避した50台の太鼓をもとの場所に戻さなければなりません。
ハーフタイムは短いので、もたもたしていると時間に間に合わなくなります。陸上トラックのコースラインで縦の位置を、各自で覚えた横の位置をもとに2分以内に太鼓の配置が完了しました。
そしていよいよ演奏開始です!
最初はNECグリーンロケッツ東葛のチームアンセム”All on Board”斉唱から始まります。この日のため、私はスクラムZの冒頭にチームアンセム”All on Board”を挿入しました。

GR東葛のためのスペシャルバージョンです。チームスクラム練習会では、私は必ずチームアンセムを全力で歌いました。
通算すれば軽く100回は歌っています。私の独唱に続いて演奏者全員で“All on Board”を歌いました。チームスクラムの力強い歌声がスタジアムに響きました。
すると、メインスタンドから歌にあわせて手拍子が沸き上がって来たではありませんか!
驚いている間もなく、山野博矩さんの締太鼓がスクラムZを叩き始めました。山野さんはスクラムZの前身である「スクラム!」の初演から締太鼓を叩いている、まさにスクラムZを知悉している演奏の要です。入り出しのテンポは完璧です。
4人の締太鼓奏者の4小節の前奏の後、宮太鼓43人による最初の一打が打たれました。その音は「ドン!」ではなく、スタジアムでは「ドッシュン!」と響きます。
スクラムZは大規模なスタジアム演奏を意識して作曲しました。最初の一打が打たれた瞬間、私はお客さんの心を掴んだと確信しました。それほど強烈な響きがスタジアムに響き渡りました。
第一主題の後に続く展開部も非常に良い演奏でした。
勇壮な第一主題の直後、突如音が消え展開部が始まります。宮太鼓の最初の2小節は「ミュート(消音)」で演奏します。特に宮2パートはぱっと気持ちを切り替えなければなりません。技術的にも難しい箇所です。ここもピタっと決まりました。ここから徐々に音を強くしながらテンポを上げていきます。ラグビーの試合ではモールが出来、ボールの奪い合いが激しさを増していくシーンです。47人演奏者全員が、阿吽の呼吸でここも決めてくれました。
次の締太鼓ソロが圧巻でした。山野さんは、この日のために練習してきた締太鼓を渾身の力で演奏しました。

モールからボールを奪った味方が、素早いパスを受けて相手ゴールラインに向かってダッシュするシーンです。およそ40秒の独奏を聞きながら、選手が相手デフェンスを躱しながら駆け抜けるシーンが目に浮かびました。
独奏が終わった直後、お客さんから大きな拍手と声援がスタジアムに響きました。
次に続く第2主題「スクラムのテーマ」が始まりました。今回櫓太鼓に入ったのは、北本あずま太鼓で活躍する二人の大学生、當山莉琉さん(宮1)と鏑木克海さん(宮2)です。最初に演奏を予定していた2月8日、當山さんは大学受験の真っただ中でした。雪で演奏中止になったことから、大学受験が終わった3月22日は出演を快諾してくれました。鏑木さんはスクラムZの練習用動画にも登場する、スクラムZを知悉するメンバーの一人です。次世代を担う若獅子2人が大舞台で躍動しました。

第2主題「スクラムのテーマ」のコーダは再び櫓太鼓のソロが、それに合わせて締太鼓、宮太鼓がコンバージョンキックをイメージしたパフォーマンスを行います。コンバージョンキックが見事決まった直後、宮太鼓全員がスタンドのお客さんに向かって歓喜の声援を送ります。ここで演奏者とスタンドのお客さんがひとつになりました。
次に続く再現部は第一主題と同じ打ち方ですが、表現には違いがあります。
第一主題では、試合前からキックオフに至る緊張感や試合に対する選手の決意を表現しているのに対し、再現部ではトライとコンバージョンキックが決まった時の喜びを表現しています。この違いをお客さんに分かるように繰り返し練習しました。時にはメンバーの中で、喜びの表現を太鼓でどのように打つのかを研究しました。

再現部が終わるといよいよコーダ・フィナーレと続きます。
コーダは勝利を目前にした選手たちの期待を表現しています。太鼓のふちをバチの腹で叩く「フチ打ち」という打法を使って音色を変え、体を上下に動かす打法から前後で動かす打法に切り替え、演奏に変化を持たせました。選手がワクワクした気持ちでゲーム終了を期待する様を表しています。
フィナーレに入ると鐘が4回鳴ります。これは勝利の鐘です。勝利が決まって選手たちは喜びを爆発させます。私達は打ち方が目まぐるしく変わるコーダからフィナーレを繰り返し練習しました。結果、今回の演奏で難しかった喜びの表現が結実したのです。
最後は勝利のVサインで締めます。Vサインが決まった時、スタンドから大きな拍手と声援が沸き上がりました!中にはピョンピョン飛び跳ねる子どもたちの姿もありました。

こうして半年以上かけて練習してきた「スクラムZ」は、アンセム斉唱を含めて4分50秒のスタジアム演奏が終了しました。
【成果】
3月22日の演奏は、過去4回行ってきたスタジアム演奏の集大成でした。そして今回が、NECグリーンロケッツ東葛のホストゲームでの最後の演奏となります。
スクラムZを作曲してからすっと追求してきた「試合に勝つための太鼓」という目的が、今回の試合に勝ったことで更に鮮明になりました。試合に勝つためには応援の力が欠かせません。応援は、スタジアムに集うすべての人々の力の集結することで力を発揮します。
スクラムZによって、演奏者、観客、選手、事業者、試合開催地の自治体の力が集結し、応援のワンチームが誕生しました。
もう一つ、この連載ブログのテーマである「和太鼓は音楽だ」という考えも実証できました。スクラムZはラグビーの応援歌としてラグビーの様々なプレーを和太鼓で表現しています。お客さんは「スクラムZ」を観て聴くことによって、ラグビー選手と共に戦う気持ちになったと思います。
音楽には、演奏家が何かを表現しながら演奏し、聴き手がそれを聴いて何かを感じる、というコミュニケーションの側面があります。それが、演奏中の手拍子、歓声、掛け声、拍手、演奏と共に飛び跳ねる子どもたちの様子に現れていました。
そして、世の中が求める太鼓とは「人々がつながる太鼓である」ということが分かりました。今までありそうでなかった、スクラムZのような「目的を持った和太鼓曲」が人々を動かしました。それは、スタジアムに集まった人々が「スクラムZを通して繋がっていく」ことを求めていたからです。
参考文献
・演奏家と聴き手のコミュニケーション 河瀬諭著 ヤマハ音楽研究所投稿論文
・演奏する姿は大切 河瀬諭著 ヤマハ音楽研究所投稿論文

